第2章 第9節『死にゆく人に関連した・・・』は、今後の在宅には必須の内容

ごぶさたしております。石田です。初任者研修講座のしめくくりは、『終末期』。人は誰しも老いていき、いつ死ぬか分からない。必ず、死を迎えます。避けては通れない道です。それには、終末期のとらえ方や死までの心身機能の変化を理解し状況に合わせた対応が求められます。とても大切な内容ですが、朝いちばんからとなりますと、なかなか重い…気がします。

 まずは、アイスブレイクも兼ねて「みる」と読む漢字を一つずつホワイトボードに書いて頂きます。見る・観る・看る・診る。この4つは、わりと皆さん、すんなり思いつかれます。その後の3つが、難しいようです。普段の会話では特に使い分けている意識は殆どない「みる」ですが漢字で書くと『確かにっ‼そう』と納得できます。お医者さんの診る、看護師さんの看る、様子や状況を観る、その方の生活全体を覧る、介護職はその立場でいろいろな視点でみていることに気づかされます。そして、その視点で得たことを関係する専門職種と連携を図ることが重要になってきます。そのために各科目の内容を理解することが必要なんですね(=゚ω゚)ノ

  漢字の問題をよく出すよう・・・

今回は、この中の「看る」から『看取り』につなげて授業をすすめていきます。

終末期について、アドバンスケアプランニング(ACP)=人生会議やデスカンファレンスグリーフケアリビングウィルなど、ここ最近のキーワードとして挙げられますね。また、キューブラーロスの死の受容終末期のバイタルサインの変化などをしっかり押さえておきたいところです。

日本が少子高齢化の真っ只中で今後も加速することは皆さん、よくご存じだと思います。その少子高齢化の意味することに、これから「多死社会」も加速するということです。厚生労働省のデータによると2040年には死亡者数がピークになります。

41万人が看取り難民化すると推計されています((+_+))…病院の入院ベッドが不足することによる死亡場所不足。いわゆる看取り場所が足りなくなるということなんですね。

現在の日本では病院で亡くなることが殆どですが、今後の状況を考えると在宅で看取ることが多くなってまいります。かつてのように、自宅で家族に見守られながら最期を迎えることが普通だった、あの時代のように『自宅』で看取ることになるのですが、そこには家族以上に医療や保健、福祉サービスの専門職チームが見守っているのかもしれませんね。

 終の棲家に代わる住まいも色々

 グリーンライフ・カレッジでは、テキストにはないのですが、独自で『エンゼルケア』の実習を取り入れています。

エンゼルケアとは、「死後のケア」のことです。死後に行う処置、保清、エンゼルメイクなどのことで、『逝去ケア』とも呼ばれます。その目的は、亡くなった人のセルフケアの代理であると考えられており、その方の代わりに行うといった気持ちで臨みます。

私事ですが、介護の仕事に就く前は病院で看護助手をしておりました。その頃に、たくさんの方のエンゼルケアをさせて頂きました。初めて担当した時のことは、今でもよく覚えております。

ご家族から「母が一番気に入っていた着物と帯を持ってきたので、これでお願いします」と渡されたのですが、着物だけでなくお襦袢から腰ひもからあり、何とか着物を着て頂いたのですが 、次に帯の巻き方が分からない。ペアになった看護師さんと「あーでもない」「こーでもない」と四苦八苦して着付けたものの、襟元が逆になっており、また着付けをし直し・・・。初めてだっただけに、本当に勉強になりました。

最初の頃はエンゼルケアの対応にあたると、その後は食事が入らないほど感情移入をしておりました。じょじょに慣れてくると、業務の一環として平気になっていることに違和感を覚えるようになり…。そういったことから介護職に転職した経緯があります。今振り返ると、当時は本当に貴重な経験をさせて頂いたと改めて思います。

では、エンゼルケアの実習内容を紹介します。

まず、点滴などの挿入物を抜いて傷があれば処置を行います。次に、温タオルまたは、洗面器に逆さ水(水にお湯を注いだもの)を用意し、タオルで全身の清拭をします。身体の穴(耳、鼻、口、肛門など)に青梅綿を詰めます。最近は、専用のゼリーなどを注入するキットなどがあります。

上記の内容を終えたところから、人形を使って実習を行います。

陰部洗浄の後にオムツを装着し、汚物による寝衣の汚染を防ぎます。

 新しい寝間着に着替え

和式寝間着は「左前身頃」「縦結び」なるように着用します。

口が閉じない場合は、顎の下にタオルを丸めて固定することもあります。

 タオルでも難しい際はあごバンドで固定

 胸の上で手を組み合掌バンドを巻き

 エンゼルケアが完了

 最後には顔あてをかぶせます

今回、エンゼルケアで使用したものは、あごバンド、合掌バンド、顔あての3点セットです。(ちなみにAmazonさんで購入しました。)

 エンゼルケア 3点セット

実習では省いていますが、『エンゼルメイク』について、少しご紹介します。男性女性にかかわらず、化粧水やクリームを塗ってから、薄くファンデーションやほほ紅で肌色を整え、口紅を施します。その表情には、生前のお姿が偲ばれます。エンゼルケアの中で一番、気持ちを込めて丁寧に行います。何より私自身が一番好きなケアでした。

エンゼルケアというのは、亡くなられたご本人だけでなく、ご家族への対応なども含んだ臨終後の全てのケアをさします。その方の最期にかかわらせて頂ける大事なケアになります。今後、増えるであろう在宅での看取りを担っていく皆さんには是非とも知っておいて頂きたいと思います。

戻る